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リフォーム約款について
約款解説
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第6条 不可抗力による損害
不可抗力による損害に関する条項は、各社で方針が異なる面が大きいため、選択制となっています。詳しくは>【解説】不可抗力による損害について をご参照ください。
秋野 これは何が起こるか分からないので是非欲しい条文です。 ただ、不可抗力による損害条項というのはお施主さんからいわゆる『契約約款クレーム』、「この約款お宅に有利すぎるんじゃないの」ということで、クレームが寄せられる率ナンバーワンで、これは震災前であってもナンバーワンなので、よくよく確認を取っておきたい条項です。
 新築の約款のときにもご説明を申しあげましたが、基本的には天災地変が起きた時は、不可抗力による損害については「発注者、受注者が協議して重大なものと認め、かつ、受注者が善良な管理者としての注意をしたと認められるものは、発注者(お客さん)がこれを負担します」という条項になっています。
 ただ、天災地変による損害はお客さんもちというのは見栄えが悪いということで、ハウスメーカーなどでは、「受注者が善良な管理者としての注意をしなかった場合には、受注者(工務店)が負担します」という表現をしているところもあります。
 ところが、この表現は法律的に全く意味のない表現でありまして、じゃあ善良な管理者としての注意をしていた場合はどうなるの、ということについては何も謳っていないことになる。通常は工務店は善良な管理者としての注意義務、労働安全衛生法を遵守してしっかりと現場管理をしながら工事を進めているのが通常であって、やみくもに危険にさらすようなことはしない。
 だから善良な管理者としての注意を払っているのが通常である。そのことについて何も言っていない条項なんか定めても無意味じゃないかと。で、例えば積水ハウスなんかは、もう不可抗力による損害もうちが持ちますという条項をわざわざ設けています。どうせうち持ち(受注者負担)になっちゃうんだったら、じゃあうちが持ちますとアピールしようよ、というような形でやっています。
 ちなみに皆様方に、東日本大震災でいろいろと手待ちが起きたり、やり直しが起きたり、いろいろあったかと思うんですが、あの時どう処理したかというのも一つ参考になるかと思います。
 この不可抗力による損害条項というのは、建物が出来上がるまでの間です。建物ができた後は瑕疵担保責任の条項なので、建物ができあがっている工事途中の物件について、東日本大震災が起きて、やり直し工事がちょっと出てしまいましたと、その分の費用をお客さんに請求しましたか。いや、あの時うちはお客さんに請求しないで、うちで抱えたよと。極端な話、液状化で沈下して、沈下したまま引き渡すわけにもいかないから、うちの費用で持ち上げたよ、という会社さんもいるんですよね。
 そこまでするんだったら、むしろ、不可抗力による損害はうちが持つって言ってしまってもいいじゃないかという気もしなくもない。
 じゃあ、もう面倒なので、不可抗力による損害条項も外してしまおうかという、この判断がなかなかしづらいのは、約款がついていないと民法の解釈による、不可抗力による損害が起きた時には、天からお金は降ってきませんので、従って請負人か注文者のどちらかが負担しないといけない。いずれかが負担しないといけないということは、これルールが定まっていないと揉め事が起きるんです。
 だから不可抗力による損害が生じた場合には、その損害額については、発注者・受注者が協議の上決するというのは全く無意味な条項で、どちらかが負担するという形で書いておかないと意味がない。そうすると、工務店を守る立場という形で考えますと、善良な管理者としての注意を払っていた場合にはお客さん負担という、クレームの多い条項ではあるけれども、押さえておきたいなという気はします。
 ただし、不可抗力というのは、要するにハリケーンとか竜巻とか大地震というのはどのくらいの発生確率で来るのか。それに対して、お客さんの方も地震とかそういったことに敏感になっている中で、約款を読んでいったら、「何これ、私が負担するの?」みたいな形で、その都度小さないざこざを起こしながら契約をするなんていうことを考えたら、積水ハウスのやり方も一理ある。
C社 基本的な質問なんですが、お互いの責任にできない不可抗力というのはどの程度のことを言うんですか。例えば台風であれば、毎年来るような台風のどの程度が該当するのかとか、地震も例えば震度6強なら該当するけど6弱なら該当しないとか。その辺のラインはどうなっているんですか。
秋野 基本的にはそこは別にラインとしては大きくない。不可抗力という言葉の意味というよりは、両当事者に責がないけれども現実に損害が出てしまったということなので、台風と言えない大雨で、例えば川が増水して排水されず水が道路に噴き出して木部を濡らしたとする。取り替えなきゃねという時に、お客さんも悪くないし工務店も悪くない。
これが、瑕疵担保責任を免責させる方の地震とか不可抗力の考え方はこことは違うんです。あっちは、例えば瑕疵担保責任の瑕疵があるかないかというところで当然耐震性というものを求められるのであって、地面が揺れるというのは耐震性がある建物であることの実証実験みたいなものですから、それに対して耐えられなかったとして、それが地震免責になるかというと、阪神淡路大震災の裁判例では地震だから免責だとは言えませんという形で、引き渡し前の問題と引き渡し後の問題を分けて考える必要はあります。
 で、僕が、工務店が悪くないにもかかわらず発生する損害を約款で極力防止してもらいたいという観点で言うと、最低でもここは欲しいというところなんです、実は。
 善良な管理者としての注意を果たしていた場合にはお客さん負担だよというというところは最低条文で欲しくて、新築の場合はこれでいいんですけど、リフォームの場合は柱を抜き壁を壊し、建物のバランスが悪くなったその瞬間に地震が来て、建物が崩れてしまったらどうするんだという話があるので、これ以上に工務店を守ることが必要かという観点でリフォームの契約約款を見る。
 ただ、現実の裁判例はないのですが、法律の理屈で言うならば、建物のバランスを悪くするならばそれなりの養生をして工事をするのが筋でしょ、という話になってしまうので、解体する最中に建物が偏心していて、それがきっかけで地震で倒壊したら、これ善良な管理者としての注意を果たしていないという判断になろうかと思います。だから、いくらこの条項があっても工務店負担になる可能性がある。
 ただ、幸いにして中古住宅というのは今は価値が低いので、例えば固定資産の評価額で300万の家だったら、建物全部が壊れたとしても、損害額はアッパー300万円。
建て替えで2,500万払わされるリスクというのは無いんですが。その建物の価値内での賠償はしなくてはならない。
A社 もしこのままいったとして、お客さんがそんなのいやだと。何かあった時にうちがお金を払ったらうちはもう無いよ、ぎりぎりでやっているのに、という話になった時に、今この保険というのは無いと聞いているんですが。不可抗力、津波の保険がない。工事側も無いです。この状況は相変わらずですか。
D社 変わらないと思います。
A社 とすると難しいですよね。逃げようがない。祈るしかない。
B社 おそらくリフォームの時って、そんなに無茶な事はしないでちゃんとサポートがあってやっているんですけど、大体腐朽していたり白蟻が食っていたり。
 それでそこに地震が来て、やっていたかやっていなかったかなんて崩れてしまったら分からないわけで、リフォーム中に大きな地震があった時のことを心配しているんですけど、その時に善良だぞという話ではなくて、なんでリフォーム中に潰れたらうちが直さなくてはいけない、負担しなくてはいけないのかと思ってしまったりもする。
 だったら施主負担だと言っちゃいたいぐらいなんですが。ただ、おっしゃる通り施主にそれを説明すると、新築の約款をそのまま見せてやった場合に必ず「え、そうなんですか」と。まあでも「そういうものなんです。神に祈りましょう。」というので半ば強引に通していることもあります。
C社 もしリフォームで地震が来ても、そもそも耐震リフォームなんていうと何もしなかったら潰れる可能性があるものを耐震リフォームしようということで始めるわけで、それを手を付けた瞬間から地震が来ても崩れないようするというのは不可能な部分が多いし、もしそれを最大限実現しようとすると費用が余りにも高くつきすぎる。
 現実的でない場合がありますよね。その辺がどうなのかなと。確かにちゃんとした、きちんと耐震性が備わっている家を、増築とか部屋の間取りを変えるとかで柱を抜く、梁を抜くという時に地震が来たら、これはもう不運と思って諦めるしかないかなと思うんですけど、そもそも壊れそうな家の場合はどうなのという、その辺もありますよね。
秋野 一応ですね、せっかく施工者サイドでリスクを回避するためにという形でつくっているわけなので、その観点から言うとここだと。ただそこでは抑えきれないリスクは残っていますよというところはご確認をいただきたいことです。
 ここは応用問題になってしまうんですけど、どうしても摺り合わないということであればAとBのどちらかを選ぶとか、そういう形でやっていただきたいと思います。
第7条(工事完了確認、支払および引渡)
秋野 こちらは工事が完了してお金をもらう条項になります。請負契約書は役割の一つとして、お金をしっかり頂きますということに関するルールを定めるという機能がありますから、そういった意味からすると意義のある規定なのかなと思っております。
第8条(瑕疵担保責任)
秋野 瑕疵担保責任なんですが、今回の約款では2年という形で謳いました。
 ちなみに新築の場合には、保証書記載の瑕疵担保責任を負いますという形で、保証書に瑕疵担保の責任の役割は担わせているんですが、ここについても議論の対象になるかと思います。
 リフォームに関しては、予算の兼ね合いとリフォーム工事の内容というのは密接不可分に関連してくるので、一律に保証期間という設定をすることが果たして適切なのかどうかと言う根本命題があろうかと思うんです。
 例えば、外壁の塗り替えリフォームで、洗浄してただ塗るだけなら1年保証です。でも下地から含めて丸ごとやり直させていただいたら保証期間を増やしますよといったような形で、リフォーム提案と瑕疵担保責任期間というものを対にすることもできます。
 ただこれもリフォームの種類にもよりますのでケースバイケースということになるのかなと。
 あと実は、短期保証期間というのは、2年もつことができるものと、2年も保証できないものもあります。6ヵ月とか1年で切るようなものもあろうかと思うんです、皆さま方が仕入れていただいているものの保証期間として。
 そういった状況もあろうかと思うので、本当は新築の約款のように保証期間というもので区切って、ケースバイケースで期間設定していくほうがいいのかなということは思っているのですが、ただ何も定めていない、きちんとしていないといつまでも、リフォームでも10年保証とかという形にもなりかねないからきちんと期間を押さえておきたいというニーズもあろうかと思います。

F社 リフォーム瑕疵保険はどうなんでしょうか。保険を使うと保険の方で5年の瑕疵担保責任が設定されて、それがこういう約款と相反する場合にはどちらが優先されるとかっていうのは気にしないといけないんでしょうか。
秋野 リフォーム瑕疵保険の時って、新築の場合だと保険を使う場合の特約条項とか、この説明をしてくださいというシートがあったと思うんですけど、リフォーム瑕疵保険もあるんですか。
S社(保険法人) それは今はないです。新築の方は瑕疵担保責任のことを書かなくても、資力確保自体が法律で義務化されたので、法律で位置づけられているということで無くてもいいということになっているので保険法人は今つくっていないですね。
 ですが、リフォームの方は義務づけが無いので、約款の方に書いていただかないといけないということになるんだと思うんです。
 約款の方に基本構造部分の5年間を保証していただくということを書いていただくことを保険法人としてはお願いをしているという形になります。
秋野 リフォーム瑕疵保険が付く場合にはそのリフォーム瑕疵保険の内容によりますと。そうでない場合にはこの2年にします。それ以外の選択肢は無いと考えていいですか。
 僕がさっき言ったような、リフォーム工事で根本から直させてくれればこれだけ長くしますが、表面だけやるのであればまたすぐダメになるので保証期間は短くなりますというように、要するに営業の現場に保証期間という観点を持ち込むという選択肢はないと考えていいですか。瑕疵保証基準は設けているけれども保証期間は各々ケースバイケースで手で入れていく、ということもリフォームの場合はケースとしてはあるんです。
 でもそれをやりだすと、営業マンの裁量でどんどん、じゃあ20年保証しましょうみたいになってしまうと、それはそれで困ってしまうから、何かの基準があった方がいいのかもしれないですけど。
 どうでしょうか、2年という形で謳って明確化した方がいいか、それとも保証書なり保証基準という形で各会社によってそれぞれ運用ができるようにした方がいいか。
S社(保険法人) 2年って謳って、原則そこまでと。だけれども他に定めがある時はそちらに従う。保険に入っている時は保険、というニュアンスで書いていただくのが一番有り難いかなと思います。

C社 これも規模とか、どのような工事をイメージするのかによって全然違ってしまいますね。
G社 うちはリフォームでも全部短期保証書を出しますけど、新築はもちろん出してますけど、リフォームだと出さないこともたくさんありますからね。小規模は当り前ですけど、そうするとやっぱり契約が予め謳っちゃって、で短期保証は出すなら出すでまたそっちで網羅できればいいのかなと思いますけど。大規模だったら保証書出しているんで。
B社 これ、メーカーの品物なんかを交換した場合、例えば給湯器であるとか、蛇口であるとか、そういうものを交換した場合に、メーカーの保証って大体1年じゃないですか。それを約款でこう謳ってしまう。そうした場合に、メーカーは1年だけどお前の会社は2年だから2年間保証しろよという話にはならないんですか。
秋野 メーカーは1年で、工務店は2年負いますなので、1年後プラス1年分は工務店が丸ごとリスクを抱えると。
D社 でも「施工上の瑕疵がある場合は」だから、メーカー製品は関係なしということには。
秋野 いや、それはなかなか峻別が難しいと。
 要するに、2年という言葉は期間としてかちっと決めておきたいと。だからリフォーム瑕疵保険の場合と会社が個別に保証書を発行する場合には対象部位については保証・保険内容によるという逃げを3項で打って、それ以外、1年にしたいものは短期保証書を発行してもらって1年にしていただいて、というような形にしておきましょうと。
第9条 遅延損害金
秋野 次に遅延損害金の条項。ここは新築と同じ形で書かれていて、遅延損害金は損害賠償の予定を定めておかないと、あんな損害も出た、こんな損害も出たと、私はうどん屋やっていて、とても儲かっているから、休業停止期間が1カ月延びたら例えば損害額で1千万円だから、1カ月分の休業補償分として1千万円払えと言われても困るので、ここはしっかりと規定を定めておく必要性が高いのかなと思っております。
第10条(発注者の中止または解除権)、第11条(受注者の中止または解除権)
秋野 リフォームの工事もそうですし、新築の工事もそうなんですけど、一番欲しいのが解除の条項でして、とにかく契約約款は何のためにあるのかと問われれば、お金をきちんと貰う為の、あとは別れる時にきちんと別れることができるためというところがありますので、解除の条項は取っておきたいと僕は基本的に思っております。
 リフォーム推進協議会の請負契約約款では契約の中止解除条項がありません。
 契約の解除権の条項がないとなると、お客さんの債務というのは基本的に代金支払い義務なので、代金支払い義務さえ守っていればお客さんは基本的に債務不履行という事態が出ません。
 ですから、例えば契約金ゼロで最終金一括100万円というリフォーム工事を請けましたということになると、最後の最後にでき上がって100万円を払わなかった時に初めてお施主さんは債務不履行だということになる。
 その間何をしてもいいのかということになってしまうので、請負人の立場からすると非常に不安である。だから契約約款の中に中止することができる条項、解除することができる条項というものを定めて、いつでもこの契約から離脱できる、どんな人にぶつかったとしても離脱出来る条項をしっかり設けておくという意義は高いだろうと。
 工務店サイドで言ってみれば、欲しい条項は第11条の受注者の中止または解除権の中の1項(2)この契約に定める協議に応じない時には工事を中止することができて、この中止期間が2項の(1)で工期の3分の1以上または1カ月以上になったときには解除することができる。このような形の条項が欲しいというのが一つ。
 もう一つは(8)の反社会的勢力条項ですとか、こういったところに関しては欲しいところです。

 10条(発注者の中止または解除権)、11条(受注者の中止または解除権)で、11条の分量が多いのにも関わらず10条を削除したり10条の条項が少ないと、なんか施工者有利じゃないのという目で見られてしまう可能性があるから、10条もこのぐらいのボリュームがあった方がいいんじゃないかなと。なので基本的にはこの条項は新築の条項とほぼイコールで、残しておきたいなというふうには思っています。
第13条(個人情報の取扱い)
秋野 あとは個人情報ですけれども、基本的には建築する目的、アフターメンテナンスの実施の目的に限定して、ということでよろしいですよね。
 トラブルで起きてくるのは、例えば5棟現場の建て売り分譲をやりますと言った時に、お客さんから、A号棟は誰が住むんですかと聞かれて、営業マンがいやA号棟は公務員の方で、B号棟は学校の先生で、みたいなことを言ってしまうケースがあります。隣近所にどんな人が住むのかとか、非常に気になるので。でもその人って後で特定できてしまうんですね。で、それが特定できた瞬間に、個人情報保護法違反ではないかという形で揉めてくる。
 利用目的はあくまでも建築とアフターメンテナンスに限定しているにも関わらずなぜそこで言うのかと。そういう問題が起きてくる可能性があります。なので、逆に今だったら遅くないのでもっと広げますというのであれば広げますけれども。
 ただこの文言は、個人情報保護法ができた当時、国交省と住団連等の間で協議をして、規定文言という形で設けた内容をベースにしております。一応個人情報の取り扱いに関してはトラブル事例がちょこちょこ出てきますので、ここはご注意頂ければと思います。