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リフォーム約款について
約款解説
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 ここでは、平成24年11月の工務店力向上ワークショップにおける秋野弁護士の解説と討議の一部をご紹介しています。約款への理解を深める一助となれば幸いです。
第2条 打合わせどおりの工事が困難な場合
1、2項はリフォーム推進協議会の標準約款にも書かれている項目です。3項はSAREX版作成にあたって追加した項目です。
秋野 2条はリフォーム推進協議会の標準約款にもわざわざ書かれている項目です。リフォームの場合には開けてみないと分からないという要素がありますので、これは必要な条項かなと思います。
 あとは、確認条項が設ける必要があるかどうか。
 例えばキッチンリフォームを受けて、既存の流し台を外したら白蟻が食っていた、ということになればこれは白蟻駆除は追加だと思うんですが、そういったことを念のため確認で設けておく必要があるかどうか。「私はキッチンリフォーム一式で300万と工務店から言われているのだから300万円でやってくれなきゃいけないでしょ」とか。
 あとは、新しく設備を設置するに際して既存の家に這われている電気配線では不十分だったとか、電気容量を増設するような別途の電気工事が必要になったと。
 それは工務店の立場で言えば追加なんだけれども、「いやそういうことが必要だったら最初に言ってくれればよかったのに」みたいなところであらかじめ予測できるトラブル事例というんでしょうか、これは本体か追加かでもめそうな事案があれば例として挙げてもいいと思うんです。
 各工事の項目については本契約の内容に含まれないことを相互に確認しますという一項を入れて、よくありがちなケースについては、それは本体に含まれないんですよということを念のため書いておけばそこでもめることは無くなるだろうと。僕のイメージで言うと配管類、電気配線、白蟻。
A社 あと多いのは雨漏りによる腐食ですね。
秋野 具体的な記載がなければイメージしにくいというのであれば入れますし、そこはもう個々の説明で出来ていますということであれば1、2項に任せてしまいますし。
B社 うちの場合には挙げるときりがないくらいいろいろなパターンが出てきてしまうので、個別に今回のお客さんの場合にはこういうことが想定されます、というものを説明して、それがこの約款の第2条(打合せどおりの工事が困難な場合)の言っていることですよ、というような説明をしています。
A社 雨漏りも白蟻も、追加と認めてくれることが多いのであまりトラブルにはならないです。全般的な「予測不可能な状況」によりということでいいのかなと。
C社 時々あるのが「プロなんだからそれぐらい予測できて当たり前なんじゃないの」と。言われることがあるので、そういう時に具体的に書いてあると「約款にもありますようにプロでも予測が難しいです」と言えるかなと思ったりもします。
第3条(一括下請負・一括委任の禁止)
一括下請けは建設業法で禁止されているため、一括下請けするためには承諾が必要になります。本約款では、発注者が「あらかじめ承諾」することによって承諾書面の役割を担う形になっています。
秋野 リフォームは一括下請けが多いというのが私の認識なんですが。わざわざ現場監督を立てて工程管理するのではなく、業者さんに「行って来て」というようなケースが、小工事と言われるようなものでは特に多いという認識を持っています。
建設業法上は、承諾を得て一括下請けしてくださいということなんですけれど、一括下請けが多いリフォームで、いちいち書面で本当に同意が取れますかというところに関してはご協議を頂く必要があるかなと思います。
逆に一括下請で、リフォームでお客様から承諾書面を取られている会社さんっていらっしゃいますか。
D社 見積もりを渡して、何日から入りますからっていうぐらいの感じで終わっているんじゃないですか。
秋野 そうすると、ここは、「あらかじめ一括下請けとすることを承諾することとする」としてもいいですか。一括下請けは建設業法で禁止されていますから、承諾が欲しいんです。何かしらの書面は欲しいんですが、その書面の役割をこの約款の中であらかじめ承諾するというように書いてしまうという。
E社 リフォームに関しては、おっしゃる通り一括下請けの形になってしまうケースが多いと思います。
逆にお聞きしたいのは、建設業法における一括下請けにあたる規模というか、例えば玄関の鍵を交換してくださいという依頼を受けて、鍵屋に、こういう工事があるから行ってきてと言う。これも一括下請けになってしまうんですか。
秋野 そうですね。建設業法の許可を得て、建設業として、30円の工事であろうと5千万円の工事であろうと、建設業者が工事をする場合には建設業法の対象となりますから、一括下請け禁止条項は働きます。
これに対して、施主の承諾があっても一括下請けできないもの、公共的建築物ですとか、マンションとか大規模建築工事は施主の承諾があっても一括下請けできません。
戸建ては、施主の承諾があれば一括下請けしていい。当然のことながらリフォームも、施主の承諾があれば一括下請けしていいということになります。
E社 元々、仕事を受注するだけ受注して、2〜3割抜いて下請けに発注してしまって粗悪なものをつくるのを防止するという意味ですよね。
秋野 そうです、そうです。
E社 リフォームやっていると皆さんそうですよね、簡単なものは一括発注になってしまいますよね。打合せはするにしても、いちいち監督は付けないだろうし。見に行ったとしても一括下請けになる可能性があるから、法律上問題なければそうしておいたほうがいいような気がします。
B社 そこで監督が立ち会って工事したら一括下請けにはならないんですか。
秋野 そうです。実質的関与ですね。業者が工事をするに際しての手配から工程管理から、要するに現場監督としての仕事をしっかりしてますよということであれば、手は業者、職人でもいいんです。
第4条(材料支給・貸与品がある場合の特則)
秋野 支給品はトラブルが多いので、是非いれていただきたい条項です。
SAREXの委員会の方で、4項に「残材、梱包材の処分は発注者の責任において行うものとします」という項目を追加されていて、なるほどと思いました。自分で買ってきたものなんだから段ボールとか自分で捨ててくれという(笑)。
F社 いや、それは実際は捨てられないから、じゃあ処分費をくださいというための項目なんです。普通は言わないですけど、中には処分費を請求したくなるような人もいるじゃないですか。
C社 ありますよね。ものすごいものを外国から取り寄せるお客さんとかいますから、とんでもない梱包で。うちは今ISOで全部分別して処分するので、会社の決まりでリサイクル業者に出さなくてはいけないので、大変です。
D社 これ、増えていますしね。
第5条 工事の追加・変更、工期の延長
秋野 工事の追加・変更は十分起こり得るというところなんですが、実際例えば屋根のリフォームでしたら天候に影響されることもあるかと思いますし、工事の変更が起きれば工期の変更なども起こり得ることにもなるので、いろいろ条項として設けておきたいというニーズは非常に高い条項だとは思うんです。あとは全体のボリューム感ですね。重たさ感がないかどうかを念のため確認しておきたいのですが。
 それから、今回約款チェックをしていくにあたって、この工事の追加・変更と工期の変更について、いただいた最初の案では、書面条項が抜けていました。
 新築は書面でやるけれども、リフォームでいちいちお客さんと書面を交わすのは、そこまで大儀なことはやめようというところなんだと思うんですが、ここのところはできるだけ、リフォームと新築で額は違えども、リフォームの方がトラブルは多いので、従って書面化する必要性というのはリフォームと新築であまり違いはないのではないかということで、残すことを提案させていただきました。追加変更、2枚複写式の打合せ議事録でいいので。これがないと「言った、言わない」になってしまいますので。
 特に住まいながらのリフォームですと、僕らは契約約款の中に無干渉条項というのを設けることがあるくらいです。お客さんが大工さんとかに、「こうならない?ああならない?」みたいな形で話しかけることができる状況ですよね。新築だと現場に行って組織立って動いている中であれこれってやりずらいですけど、リフォームだと身近に職人さんがいるのであれこれ言われて、めちゃくちゃになってしまう可能性があるから、追加変更がある場合にはしっかりと書面でやりましょうという必要性は割と大きいのかなと。
 多分リフォームなのでそんなに大掛かりでないから書面までいちいち、というところだと思うんですけど、むしろリフォームのほうが欲しい。書面主義ですね。
D社 これからリフォームをめぐるトラブルが増えると思うんですよね。特に工務店ではない悪質リフォーマーみたいな人たちがかなり跋扈しているので、その点もやっぱりこういう契約書で差別化するということが大事だと思います。
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