2016参院選 消費増税の課題 軽減税率は小異、福祉目的が大同
◆SAREX News 2016年2月◆
丙猿騒ぐ。今年の干支を地で行くような大発会明けの株式市場大下落。新春お定まりのアナリストによる株価予測は年初早々大外れで幕開けし、世の摩訶不思議を実感する。上海株暴落によって引かれた世界同時株安もまだ序の口に過ぎない。
100年に一度のリーマン・ショックは欧米のサブプライムローンによる住宅バブルの崩壊が原因であった。近い将来発生が予測される中国不動産バブル崩壊の規模は人類史上最大と言われている。
そして来年に控える消費税の増税課題。2桁税率への移行を前に消費税の本質を考える。
■高福祉、高負担 さらに長期安心国家経営■
昨年、世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金(GPFG)は、日本向け不動産投資として東京に限定して1兆円を投資することを公表した。なお、名古屋、大阪への投資予定はない。ちなみに全世界のSWFの規模は7.25兆ドルで、ノルウェーGPFGの資産高は8,930億ドルである。
ノルウェーGPFGの東京不動産投資の理由は5点挙げられている。①オフィスビルの空室率が低下し都心5区の空室率が4.5%となっている、これに伴う②賃料上昇期待、及び③TPP効果からオフィス需要拡大への期待、そして④オリンピック効果、最後が⑤超金融緩和継続観測である。
ノルウェーSWFは、産油国であるノルウェーの北海油田が枯渇した将来に備えるためのファンドで年金支払いの基金ではない。分散投資の原則に忠実で非ノルウェー貿易国や非クローネ建てで海外投資により資産運用を行っている。政府系ファンドの組成要件は長期にわたる将来計画が前提となる。目先の対策に拘り過ぎる日本の最も欠落した部分であろう。
日本にも似たような基金である外貨準備高1兆3,000億円が存在する。従来、運用方法は米国債一歩槍であったものをリーマン・ショック後の米国債利回り低下に耐えかねて、証券投資運用も始めている。いわゆる武士の算盤で昨年は3兆円の穴を空けて週刊誌で揶揄された。年金運用機構も同罪であるが、わざわざ手間をかけて年金を集め、さらにコストをかけて運用損を出すくらいなら、自分年金に変えてしまった方がよほどましである。
■財政破綻の一里塚■
財政制度審議会は2015年10月答申で、わが国の財政に関する長期推計において2020年までに財政収支が改善できなかった場合、日本国財政は破綻に向かうと明記した。
財源未確定のままの食料品の軽減税率決定に、消費増税再々引き上げのメッセージが込められている。食料品の軽減税率をガチンコの与党協議で実現した公明党はとても誇らしげで、「将来に渡って軽減税率が効いてくる」というPRが何よりもの証拠であろう。
今日の日本は、国民1人当たり800万円の負債を有し、1,700兆円の個人金融資産と相殺したとしても、いいとこ±0の無産国となった。さらに高齢社会の進展で預貯金を取り崩すマイナス貯蓄率に転じている。それでも景気対策を命題にした補助金ばらまきにタガをはめられないでいる。悪平等に堕する地域振興券などより低所得者向けのベーシックインカムの方がはるかに社会正義にかなっている。
■欧州型、米国型、高齢社会先頭型■
世界経済や日本の財政はさりながら目睫の間は消費税の位置づけである。世界では付加価値税の呼称が一般的なこの直接税の税率は極めて高い。高福祉で知られる北欧3国のノルウェー、デンマーク、スウェーデンの税率は25%である。そして国家経営に失敗し、財政再建中のアイルランド、ギリシャ、ポルトガルも同税率の25%である。
日本の消費税は低税率から中税率に移行の過程にあり、最善の福祉国家型と最悪の国家破綻型のいずれの道をも選べる分岐点に立つ。その中間型とも言える米国型では取るものは取られるのだが与えられるものは些少で、ほぼ民生には無関係の軍事予算に重きを置く。
昨年話題となった下流老人など、米国では20年前よりプア・ホワイト―中流層の下層への転落が始まっている。2011年の「『我々は99%』デモ」や現在のドナルド・トランプ共和党大統領候補支持の一端となっている「親社会保証(トランプ候補は共和党員としは異例の社会保障拡充策を唱える)」にも現れるように、米国ですら成長よりも分配への関心が高まりを見せている。
軽減税率の対象品目線引きは小異である。高齢社会の先頭を走る日本型の税と社会保障体系の創設を考えよう。