諫早建設のコンセプトハウスから、工務店の新たなエリア進出を考える

小平市に本社を構える諫早建設が、あえてメインエリアを離れて世田谷に建設した<コンセプトハウス 世田谷 桜ハウス>。11月はこのコンセプトハウスを見学しました。

代表の辻潤也氏よりその戦略手法や手応え、今後の展望等をお話いただき、工務店の新たな顧客開拓について考えました。

 


諫早建設のコンセプトハウスから、工務店の新たなエリア進出を考える

平成29年11月16日 開催

 

Ⅰ 〈世田谷 桜ハウス〉の見学と解説

 

 はじめに

辻(諫早建設 代表取締役) 本日は遠いところありがとうございます。小さい会社ではありますけれども、まだまだ未熟なところがいっぱいある会社なので、もうちょっとこうしたらよくなるんじゃないかとか、ご意見をいただければ我々としては助かります。

杉岡(諫早建設 設計) まず、諫早建設の設計としてどういうことをやっているのかをご紹介させていただきます。

私たちの目指す家づくりは、自由設計とか注文住宅とか、ピンとこないような言葉でくくられるのではなく、お客様と一緒に家をつくり上げていきたいと思っています。

 

▶「家づくりは欲張りでいい。」

よくお客様に言う言葉です。世間では、設計はお客様の要望になるべく応えてあげるというのがありますが、お客様って例えば、部屋がいくつ欲しいとか、リビングは20畳欲しいとか、そういう表面的なところに凄く注目して家づくりをしようと思っている方がたくさんいます。不動産屋さんの「この土地ならこれくらいしか建てられないよ」とか自分たちで調べた情報が邪魔してしまって、やりたいことがあっても「できないんじゃないか」と考えてしまう方が多いと思うんです。けれども、私たちはまず、その枠のようなものを取っ払っていただいて、本当に自分がやりたいことは何なのかをヒアリングで掘り下げています。

例えば、「リビングは20畳欲しい」という要望があった時に、ただ単純に広いからという理由ではなく、もっと大切なことを見つけていただけるきっかけになるように、なぜ20畳という広さが必要なのかというアプローチを取っています。そのあたりをヒアリングでしっかり汲み取っていくことを大事にしています。

潜在的欲求と私たちは呼ぶんですけれども、隠れたところに一番大切なことがあると思うんですね。注文住宅=お客さんの言う事を聞くというだけのことに囚われずに、本当にやってもらいたいことを突き詰めて、結果こうなったという建物が、一番私たちが望むところでもあり、設計士としての役割だと思いますので、ヒアリングには凄く時間をかけています。

 

「一番似合うプランを。」

いいヒアリングをやっていくと、そのお客様にとって一番似合うかたちが見えてくるんですね。それは、どういう材料を使うとか部屋数がいくつだとか、そういったことは関係なくて、その人がそこでしっくりくる建物を私たちはプランに落として引き出していくというかたちになります。

私たちは3つ、4つのプランをファーストプレゼンで出すようにしています。1つはお客様の要望を全部入れ込んだようなプラン、2つ目は自分がこの場所だったらこういうふうにつくっちゃおうかなというプラン、あとはそれを融合した私がいいと思うような部分を残しつつ、お客様の要望も優先順位をつけて大事なところだけを残したプランを作って、お客様に見ていただく。

お客様はまず自分の要望を叶えてくれたプランを見て凄く喜ぶんですけれども、次に私どもが考えたプランを見て「こんなこともできるんだ」という新しいことに気づいてもらえる。プランの段階でいろいろな可能性を示しながら、でも自分たちのエゴだけではなく、お客様の要望もしっかり加えながら一緒につくっていくということをファーストプラン、セカンドプランでは凄く大事にしています。

お客様の要望どおりのものを図面化するのではなくて、それをどうやって咀嚼して自分たちの考えとお客様が本当に大事にしていることを踏まえたプランをつくっていくか。それが最初のプランで納まればいいんですけど、なかなかそうはいかないので、複数出して、その中から最適なかたちを示しています。

 

「美しい家をつくる。」

うちの看板シートでも謳っているんですけど、「美しい家」って非常に難しいですよね。見た目の美しさももちろんあると思います。それだけではなくて、そこの土地に似合った建物、お客さんがそこで生活をする時にちょうどいいなって思えるところが凄く美しい建物だと思うんですね。どんな場所でもしっくりくるような建物があって、それをお客様と一緒につくり上げていくところに美しさが生まれてくるんじゃないかと思います。

それと先程、お客様の要望は全部折り込まない方がいいという話をしましたが、優先順位を付けて一番大事なところを膨らませてあげるとか、お客様の要望を含めて必要なところだけを研ぎ澄ますだけでも、美しさって生まれてくるんじゃないかと考えています。

あとは単純に施工力にもつながりますよね。例えば凄く薄いクロスを仕上げるために大工さんがしっかり下地を組むわけですけど、そういった工務店の工務店たるところとして施工力は強いと思われているだけに、きちっと施工していく、納まりを考えていくというところで、その集合体として建物の雰囲気が作られると思いますし、美しさが全体的な雰囲気として醸し出されてくるんじゃないかなと思います。

 

▶ コンセプトハウスの試み

私たちには固定のモデルハウスはありません。今回のこの建物は1年前にオープンしました。これもこの後売却する予定です。

ここ(桜ハウス)の前には駒沢で3階建てのコンセプトハウスをつくったんですけれども、短期間で売却しました。次は地元に近いところでコンセプトハウスをつくっていこうと思っています。

なぜコンセプトハウスをつくっているかというと、まずは私たち設計の力を蓄えること。こうあるべきだというところを、自分たちの手でモデルハウスとしてつくっています。別な言い方をすると実験的な建物ですよね。

そういうことを繰り返していくことで、自分たちが進化し、お客様に提案できるサービスも向上していくということが一番大きなところです。

あと、こういう実験的な建物をつくることによって、お客様にできることの可能性を感じていただくことがとても大事だと思っています。うちで建てていただける方ばかりじゃないですけれども、他で建てる時でも可能性を掴んでいただくことがお客様にとって凄くいいことなんじゃないか。そういったことをコンセプトハウスで実現させながら、常に進化していきたいと思います。

 

▶ 柔軟性のある家をつくる

この建物のコンセプトですけれども、部屋は1階に1つしかありません。これは住む人が使い方を自分たちで模索しながら、もしくは生活の中で変えていく余白を残しながら使っていただけるような建物として考えています。

想定としては、子どもなしの夫婦、もしくはお子さんたちが巣立っていった夫婦、外国の方、そんなかたちです。

今、住宅の空き家問題もあるんですけど、空き部屋問題、子どもたちが巣立ってしまって4LDKあるけど今は1部屋しか使っていないとか、そういった方も多いと聞きます。自分たちが使いやすいような生活に合わせた間取りといったものをつくって、上手く柔軟に建物が動かせたら、自分たちの生活がどう変わっても、凄くフィットする建物になっていくんじゃないかと。

生活に合わせて柔軟に変化できる建物を目指したのがここになりますね。

 

▶ 顧客と共同作業で建てる住宅を目指して

私たちが今までなんとなく枠にはめて建てていたものを、いろんな付加価値というか、価値観を捉えながら、お客様と一緒につくり上げていくことを目指しています。

やはり私たち設計としては、自分が一番いいと思うものをつくっていきたいという欲求はあるにせよ、それを勝手につくってしまうと、ただの作品になってしまう。

お客様とどこまでいっても共同作業の産物としての住宅をぶれずにつくるべきではないかと思いながら、図面を描いたりお客様の話を聞いたりしています。

 

▶ 世田谷桜ハウス設計者の意図

桜ハウスは、どうやって中に外的なものをつくれるか、というのが1つのコンセプトで、それを表現しているつもりです。

例えば、玄関からあまり高低差のない繋がりで通っていただいて、その先に中庭がある。そして全部土足で上がってこられるような空間にしていて、階段の上は吹き抜けになっている。南側からの明るさを最大限に使って、それ以外についてはかなり窓は絞っています。それでもこれだけ明るくなったのは成功だったと思っています。

あと、将来的にいろんなオプションが考えられるように空間をなるべく大きく取りたいこともあって、キッチンをあえて南側にもってきたり、中身を全部一体の空間で構成しているのが特徴ですね。空間をいろんなかたちで使える、それが一番のポイントです。

例えば1階を2部屋として使うこともできるし、ここ(リビング)は壁をつくってしまえば片方は寝室になったり、エリア分けが明確にあるということです。

 

▶ 世田谷桜ハウスの仕様

木造2階建て、構造等級は3です。基礎を含めて許容応力度計算を掛けて裏付けを取った大スパンを組み込んでいます。建物自体の建築費は外構抜きで3,000万円程度。特別な要素はあまりなくて、梁についてはLVLを使ったりしています。また、展示用として家具をちりばめています。

天井高は、通常2400とか言われてますけれども、それより5㎝、10㎝上げました。それによってだいぶ広がりが出てくる。キッチンはオーダーを取り扱っている矢島という会社の造り付けです。断熱材は発泡ウレタンの吹き付けを入れています。室内はクロス仕様で、場所によって外構と同じジョリパッドを用いています。床は一番触るところなので、いつもムクをお勧めしていますが、ここは床暖房対応のナラ材。あとはGVAという制震装置を仕込んでいます。

 

Ⅱ 諫早建設のこれまでと次なる展開

▶ 会社概要

辻 まず会社概要ですが、本社の所在地は小平市(西武新宿線小平駅前)。JR中央線から一本北の線で、西武新宿駅から約30分、JR高田馬場駅から25分の場所です。創業は昭和33年で、今58年目になります。社員は12人、そのうち営業2人、設計2人、工務2人、リフォーム2人、あとは会計経理と役員ですね。

関連会社で㈱シーエステックが建材の商社をやっています。建材の仕入れ関係は他の大きな会社さんと原価を見せ合ってもそんなに遜色ない程度に結構安くできてるかなと思います。㈲イサハヤビルマネジメントは不動産会社になります。

事業内容は大きく住宅事業と不動産事業があり、この2つの事業がうまくコラボしながら成り立っていると思います。

 

①住宅事業

新築はフルオーダーの住宅のみ、年間20棟に限定しています。

ずっと何棟が適切なのか考えてきたんですが、ちょっと手前味噌ですけど、結構いい社員に恵まれているかなと思ってまして、この社員数とスキルでやった最大限の年間棟数を、働き甲斐を持ちながら、お客さんにちゃんと喜んでもらって、いい仕事をしながらやれる棟数というのはやっぱり20棟かなということで、それ以上は増やさないというポリシーでやっています。営業的にはなんとかいけるかと思ってますが、完工ベースだと20棟まで届いていないのが現実で、今なんとか完工ベースでちゃんと実施できるように業務効率化を進めているところです。

1棟の平均単価が4,000万円(税込み)、坪単価100~110万円くらいですね。

「引出力、提案力を元にやりきった満足感を追求」ということなんですけど、竣工して6ヵ月後に営業・設計でお客様のところにインタビューに行くんですけれども、やり残しやこうすればよかったということがなかったか聞くと、「ほぼやりきりました」と言っていただけるんですよね。そこを追求していって、リピーターなり紹介なりを求めていこうというやり方を今やってます。あとは、アフターメンテナンスとリフォーム、家守りは皆さんもやられていると思います。

 

②不動産事業

土地なし客は敬遠される傾向があると思いますが、うちはお客様の住まい方とか要望をかなり聞いて、できれば土地からお世話しながら注文住宅を建てていくとマッチングできるのかなという思いがありまして、不動産の仲介事業と注文住宅事業をコラボさせてお客様の満足度を上げています。特に我々のエリアは土地が20坪とか25坪とか、30坪超えると大きい土地だねという話になるので、道路条件とか周辺の環境によってお客様の要望をかなえられる・かなえられないがありますので、そういう意味では重要視しています。

あと、不動産事業については景気が悪い時に不動産をやって、景気のいい時は不動産はやらないで建築をやるという考え方です。特にリーマン・ショック後に不動産事業を始めているので、その時には建売とか売建、収益物件の購入を随分やったんですが、今は逆にいい時期なので注文住宅を一生懸命やってます。ただ、その時に購入した収益物件の大家業として今不動産事業をやっていて、そんなに積極的に買ってはいません。

 

③建売事業・建材流通事業

モデルハウスを駒沢で最初やり、今桜ハウスになりますが、これは景気に関係なく良い土地があれば購入して、建物を建ててモデルハウスをやっております。

建材流通事業では、基本的にはうちで大量に仕入れて、他の工務店さんに一部売却をしています。これはうちの仕入れを安くするためです。

2つ目は海外事業をベトナムで今やっていますが、ベトナムは若年層のニーズが物凄く多いところなので、このまま経済発展していくと何年後かに中間層が結構出てくるかなというところで住宅の実需がかなり良くなってくるのではないかという見通しがありまして、今は現地のディベロッパーさんから、我々日本の企業6社で向こうに行って造成事業とか建築事業を少しずつ始めています。あとは太陽光発電をやってます。

 

▶ 売上げと営業利益

私が入って(平成15年度)からの数字になってます。その当時、注文住宅を1棟だけやっていて、ほとんどOB客のリフォームしかやってなくて売上げが2億円ぐらいの会社でした。叔父がやっていて先行きちょっと厳しいので清算しようという話が出てきたので始めたのがきっかけです。

本当に右も左もわからなかったので、建売屋さんの下請けを4、5年やりました。目的は、コストを知りたいということと工期。この会社は着工から竣工まで2ヵ月という会社だったので、それに挑戦してみようということで全社員で頑張りました。それがだいたいわかった頃にリーマン・ショックがきて、このあたりからようやく融資が受けられるようになってきたので不動産事業を始めています。

売上高営業利益率ですけど、量より質を重視ということで営業利益率をいかに上げられるかということを会社全体でやってまして、今年は売上げ7.9億円、営業利益5,400万円、売上高営業利益率6.9%。なんとか10%までもっていけないかと今やっているところです。

 

▶ メインエリア

小平市、小金井市、国分寺市で、ちょうどJR中央線が走っているところです。西武新宿線よりJR中央線(小平より少し南寄り)の方がいいお客さんが多くて、小平より北や西に行くと全然客層が変わってガクンと落ちますので、なるだけ東、なるだけ南という方向にエリアを拡げています。

桜ハウスは世田谷区のちょうど真ん中で、ホームページとかで武蔵野市や練馬区のお客さんが来てくれるんですけど、武蔵野市だと小平に来るんですけど、練馬区だと世田谷に行きますというお客さんが多いんですよね。小平と世田谷・目黒を結んだ線のエリアで今は仕事をしていますが、広告費の投下等はメインエリアが主に対象になってます。世田谷は決して重視しているエリアではありません。

 

▶ 世田谷区での実績

リーマン・ショック後、平成20年後半から世田谷区・目黒区での建売事業・収益物件保有事業を始めました。平成21年ぐらいから建築家住宅の請負を始めまして、年間2~3棟、これは目黒・世田谷が棟数の率としては多いですね。

平成22年頃から不動産会社の紹介による自社設計案件の受注開始ということで、私と設計の女の子2人で不動産会社に営業に行ってプレゼンをして、なんとか受注しはじめました。

平成25年には駒沢にモデルハウスをオープンさせました。これは住宅公園の中ではなくて駒沢大学駅4分のところに40坪のいい土地があったので購入して建売で建てました。竣工後6ヵ月間公開して、その後すぐ売却しました。

メインエリアのお客さんがここまで来てくれれば、「世田谷でモデルハウスをやる会社なんだ。こんなカッコいい家を建てられるんだ」と、世田谷ブランドを上手く使って「都下の諫早建設」というブランドを少しでも上げようという戦略で、これは結構成功したと思ってまして、実際、都下のメインエリア、サブエリアのお客さんの受注は結構スムーズにいったと思ってます。

 

▶ 移動式モデルハウスの考え方

移動式モデルを基本にして常設はしません。これは基本的に不動産事業として採算が合っているということを前提としてます。原則として常駐していません(今本社が全面工事中につき常駐)。そして、オープン後3ヵ月までは周辺エリアの新規集客-駒沢はやりませんでしたが、桜は6ヵ月間積極的にやりました。オープン4ヵ月以降は現場見学会の次のステップや本社から遠いエリアから集客を狙うようにしています。そして、6~12ヵ月で売却します。

これの一番の目的は、自社の設計力の向上のためで、外部設計は一切入れないところなんですね。駒沢モデルは杉岡が設計をして、今回(桜ハウス)は高島という女性が設計をしたんです。

注文住宅でお客さんの要望を聞いて建物を形にするっていうのは当たり前なんですけど、自分の発想で考えて自分のトレンドでいろんなものを見ながら、最新のものを形にする力というのが大事かと思っていますので、正直設計部の2人には研修も含めてお金をかけています。設計力というのが我々の会社の根幹の強みだと思ってますので、そのへんは伸ばすようにしています。

 

▶ 建築と不動産の相乗効果

100坪の敷地(借地権)を3分割して2棟の注文住宅(広い道路側)と1区画の売地を計画しました。その1区画を当社が購入してモデルハウスを建設しました。

借地権の物件を分割して売買するのは結構大変で、不動産ノウハウがあったからできたと思うんですけど、もともとは息子さん夫婦がインターネットでうちの建物を気に入ってくれて「どうしても諫早さんで建てたい」という要望だったんですが、親御さんはハウスメーカー含めて12、3社検討していて、その中から当社を選んでくださった一番の決めては借地権の売買でした。

1社だけ買いますよっていうハウスメーカーさんがいたんですが、仲介を入れてるので手数料を結構取られてしまうんです。けれど、当社はI様から直接仲介なしで購入できて、地主さん(お寺さんなんですけど)との譲渡承諾、建替承諾とか、息子さんが借地権でローンを組まないといけないとか、全部やってあげてそれでようやく成立しました。これも建築と不動産の相乗効果が出ているのかなと思います。

 

▶ 建築家に依頼する層

今回のチャレンジですけど、世田谷区で8年程前から建築家住宅をやってるんですけど、竣工間際とかアフターメンテナンスとかとなるとだいたい建築家とお客さんの仲がギクシャクしてくるんですよね。それをうちがフォローしているうちに、うちとお客さんが仲良くなっていって「だったら最初から諫早さんで設計施工をやってもらえばよかった」という声が結構多かったんですね。そのうちの1人のお客さんから「友達が注文住宅を建てると言ってるんだけど諫早さんで設計からやる?」と言われて「是非」ということで目黒で1棟自社の設計施工でやらせていただいた経緯があるんですね。

これは、建築家に依頼する層に対してアプローチできるのではないか、ということの1つのきっかけで今回の桜モデルをオープンさせ、かつ地元集客を初めてやってみようということで始めました。

駒沢モデルハウスと同じですが、世田谷にモデルハウスがあるとか、メインエリアでのブランドイメージの向上、これによる契約までのステップを上りやすくするということがメイン戦略です。

 

▶ 桜コンセプトハウスのイベント効果

桜コンセプトハウスでの集客数は結構ありました。コンセプトハウス周辺半径3㎞(世田谷線沿線)でのブランディングに特化しました。やったことは世田谷線の車内広告、駅看板、駅ポスター、電柱広告ですけれども、駅ポスターにポケットを作って『諫早通信』を入れてあります。名前だけじゃなく、それを読んでもらって「諫早さんってこういう家づくりをするんだ」、「しっかり我々の想いかなえてくれるんだな」ってことをアピールしたかったんで、ちゃんと読んでもらった人に来ていただくことを狙ってます。

あと、建築に関係ないイベントへの挑戦ということで、このエリアの方と仲良くなろうということでバリスタ講師を呼んで「コーヒーの淹れ方教室」(1回目は大人12名、子ども2名、2回目は大人11名、子ども9名)、夜にコンセプトハウスを見ていただいた方にバーテンダーを呼んでちょっと飲んでもらう(大人15名)とか、料理教室(大人12名)とか、お客さんを呼んで座談会をして家づくりについて考えるとかいろいろなことをやりました。

おもしろいのが、オピニオンリーダーではないですが、イベントをやっていると、このへんでママ友が凄く多い方に結構出会えるんですね。桜コンセプトハウスでのイベントは実際6ヵ月ぐらいしかやらないので時間が足りないんですが、イベントはやはり地元でやるべきだなと感じたので、今、セミナーのスペースとか、キッチンを置いて料理教室とか、いろんなイベントができるようなかたちで半分それに使おうということで本社の改装をしています。

酒井(諫早建設 営業) イベントに来ていただける初めてのお客様はなかなか成約には結び付かないということがよくわかりました。逆に1回来ていただいた、もしくはうちに興味を持っていただいたお客さんを次に繋ぎとめておくためのツールとしては有効かなと思っています。

半年での集客は約100組くらいです。その内7~8割は地元の方ですが、なかなか成約には結び付きません。残りは小平とか当社の地元から確認をしに来られる方、もしくはステップアップするために来ていただけるお客様はかなり熱意のある方々なので、ほぼ成約に至るという傾向です。

 

▶ 桜コンセプトハウスを運営して

辻 実際に10ヵ月運営して、いろいろ感じたことは、世田谷区でのコンペディターの多さ、エリアの広さ、広告費の高さを実感しました。世田谷線の3、4駅でこれだけ使うのかというぐらい、あそこで集客することの難しさを凄く感じました。その上に田園都市線、東横線があるって、あれを全エリアをやってる会社って物凄いことだと思いました。

あと、集客数は拾えましたが、やっぱりブランドイメージを根付かせるには時間が足りなかったかなと思ってます。

このエリアの顧客の特徴としてはブランドネームの大きさを重視する傾向がありました。中央線の方に行くとじっくり見てくれる方が多いのですが、ネームバリューを重視される方が多いかなと思います。

逆に言うと、メインエリアとサブエリアの顧客の反応が良く、契約までのステップがスムーズでした。あとはこうしたイベントをやることで社員のやれることの幅が広がったと感じています。

 

▶ 移動式モデルのメリット・デメリット

メリットとすると投資原価回収と売買益の確保ということで、桜ハウスはこれから売らないといけないので、どれだけ利益が出るのかわかりませんが、利益想定はしています。駒沢は思ったより上手くいって約20%の粗利が出ました。あくまで不動産事業として原価回収と売買益が出るようなかたちをとっています。

やっぱり桜でモデルがつくりたくて土地を買ったのではなく、桜に安くていい土地があったからたまたま桜になった。駒沢大学で安くていい土地が出てきたから駒沢大学になったという理由です。今後は小金井辺りでつくってみたいと思って土地を探していますけど、世田谷でまたいい土地が出たらやろうと思っています。

あと、最新デザインのかたちにするということと設計力の継続的向上。設計者が自分で考える力。社員みんなそうですが、例えば私は一切指示していないんですが、今日、営業が皆さんに対してウェルカムボードを用意したり、世田谷線の切符まで用意していたりとお客様のためを思ってやってくれるとか。『諫早通信』も社員が自主的に「自分でやります」といって2ヵ月に1回出したりとか、感謝祭もそうですが、自分で考える力をつけていくというのが会社のやり方で、モデルハウスをつくってもあまり口出しはしないです。

デメリットとしては、やっぱり時間がないのでブランド構築がしにくいということ、あと長期的人脈形成-地元の不動産屋さんや紹介元のお客さんとはせっかく仲良くなっても移動してしまうのでちょっともったいないなと感じてます。

結局は短期なのでこのエリアで受注すると考えると、やっぱり不動産会社の紹介営業に頼るしかなくなってしまうのかなというのはあります。ただ、うちの一番の目的はメインエリア、サブエリアのお客さんのステップアップが目的なので、地元エリアとの相乗効果をいかにつくれるか。そういう意味では世田谷というのは小平から車で1時間、ちょっと遠いんですが、そこに来てくれるお客さんというのはほぼ契約になるので相乗効果が大切ではないかと今回感じました。

 

Ⅲ 質疑応答

堀之内(こもだ建総) 桜ハウスのエリアの坪単価について教えてください。

辻 桜ハウスについては所有権で220万円/坪、借地権で130~150万円/坪。世田谷も最近相当高くて10%ぐらい上がっています。

柳井(優建築工房) メインエリアとおっしゃっている小平市の平均土地価格はどれぐらいですか。

辻 小平は100万円/坪です。

柳井 それと、平均的な一次取得者の土地からやった場合に、だいたいの方の総額の予算と土地の広さはどのぐらいですか。

辻 うちは小平というより中央線のお客さんが多いので、「予算6,500万円を用意してください」と言ってます。そのイメージでは建物が30~32坪ぐらいです。

世田谷に行くと当然土地は倍になるんですけど、建物の単価が上がるかというと、うちが相手にする層はそんなにむちゃくちゃなアッパー層ではないので4,000万円超えるというのはなかなかありません。逆に小平の建替え層の方が1棟単価としては大きいものは大きい。だから世田谷に行ったからといって単価が上がるかというとそうでもない気がします。ブランドイメージの向上はかなりあると思います。

蓮実(優建築工房) 集客が6ヵ月で100組ぐらいというお話をされていましたが、イベントも含めた上での集客数でしょうか。

最後の方になってくると、週末だけを開放していたとしても誰も来ない日もあると思いますが、その時は常駐する人とか、社員であればそこでどういう仕事をしているのかとか。

酒井 イベントを含めた集客数です。今は営業の拠点を桜に移していますが、時間ができた時は掃除をしたり、外へ行って「ちょっと寄っていきませんか」と声を掛けたりしています。

蓮実 例えばモデルハウスに待機しなきゃいけない時間帯と他を訪問して商談しなきゃいけないことがバッティングすることが考えられると思うんですが、そのあたりの調整はどうしているんですか。

酒井 訪談が優先です。モデルハウスは今残念ながら土日開けていてもほとんど訪ねてくる方はいないので、事前に予約がなければお約束を優先しています。

蓮実 ある一定期間から先は、ステップアップとしての役割の方が意味合いとしては強いというかたちですね。

辻 基本的にはモデルハウスの常駐はやらないんですね。今、本社の工事をしているので、たまたま桜(世田谷)で仕事をしてもらってるんです。うちの会社は日曜日が定休なんですよ。当然見学会とかイベントの時は出ますが、イベントに来てもらったお客さんのフォローを平日にやるといった考え方です。やっぱり3ヵ月を過ぎるともう集客は見込めないと思ってやってます。

菰田(こもだ建総) 今回の世田谷のPRのための宣伝広告費は実際いくらぐらいですか。

辻 かなりかけました。全部で400万円ぐらいですね。

堀之内 コンセプトハウスで集客されて、その後次のステップにつなげていくためにどんな手段を使い、その流れに沿って営業が設計に引き継いでいくためにどうしているのか。それと、契約に至るまでの期間は平均どのくらいでしょうか。

辻 まずお客さんが来たとして、次のステップとしてイベントを用意していたんですね。うちの場合は設計が忙しいので、例えばイベントですとか、OB訪問を個別にやったりとか、その中で「諫早さんでやります」と言ってもらってから、ほぼうちでやるだろうというお客さんを設計に上げます。そこで設計が初めて出てきてファーストプレゼンのためのヒアリングをやるんですね。

酒井 契約成立まで3~4ヵ月はかかりますね。まずホームページを見て知ってもらう、コンセプトハウスに来ていただいて我々を好きになってもらう、それからイベントや見学会等に来てファンになってもらう。それで8~9割「諫早でやろうかな」と思っていただいたお客さんを営業から設計に渡す。設計に渡すとほぼ落とさないので、そのぐらいうちの設計はレベルが高いかなと思います。

段階としては、ヒアリング→ファーストプレゼンを出す→ブラッシュアップ→セカンドプレゼンを出して、順調な人で次に概算見積りを出す。ここまでで2ヵ月経っちゃうんですね。概算が予算内に納まっていれば設計仮契約を行って、100万円預かって地盤調査、外部に出すもの等に当てる。会社としてはもっと効率化を図らないといけないとは思うんですけど。

菰田 坪単価100~110万円は外構込みですか、建物だけですか。

辻 外構込みですね。お客さんにはだいたい85万円ぐらいからスタートという話はしています。

菰田 結構高いので、値段を出した時にせっかく集客したお客さんがどれだけついてくるものなのかなと。

辻 おっしゃるとおりで、最初の金額を聞いた時点で離脱される人は多いですが、でも追えない。土地なしで建物を建てるのに6,500万円用意できるといったら高給サラリーマンの中でもいい会社(製薬系とかエネルギー系とか)であるとか、共働き、公務員。それはもうしょうがないかなと思っているんですけど。

そういう意味では、なるべく早く設計契約を結ばなきゃいけないというところで土地が出てくる。土地を一生懸命一緒に探して、アドバイスをしながらだと、土地の契約=設計契約のかたちで結構早く設計契約が結べます。

畑野(鈴木工務店) 移動式コンセプトハウスでは地元のオピニオンリーダーとのネットワークが活用されているようですが、メインエリアでも何か試みているんですか。

辻 コンセプトハウスでは、集客もできたし、オピニオンリーダーとも会えたし、いろんな人脈ができました。でも、期間が限られているのでプツッと切れちゃうと。メインエリアでやればずっと続けられるので、それを本社に戻そうと、今本社内にイベントができるようなスペースをつくっているところです。

畑野 そこでの仕掛けというのはソフトもハードも含めて考えているんですか。

辻 やろうと考えています。それはずっと続くものですし、お客さんに貸し出してもいいと思っています。

堀之内 ファンづくりに関してツールとかいろいろあると思うんですが、当然自分たちでつくられた作品を見ていただくという流れの中で、例えばオーナー宅訪問に関してのルール的なものはあるんですか。

酒井 実はそこがあまりルール化されてないんですよ。建てた後にファンになっていただく方が多くて、自慢したくてしょうがないっていうお客さんが結構いらっしゃるんです。でも、そのための謝礼も払ってないですし、お礼をしなくても見学会をやらせてくれますから。

辻 謝礼にばらつきがあると、感謝祭の時にその話が出るといけないので、そのあたりを詰めようという話をしています。

堀之内 実際設計をしている方がヒアリングにどれだけの時間をかけているのか、どんな内容なのかをお聞きしたいんですが。

杉岡 ヒアリングについてお答えしますと、モノとか広さとかはあまり聞きません。何が好きなのかというところから始まって、ざっくばらんに今までどんな生活をしてきて、これからここでどんなふうに過ごしていきたいか、といったことが大事だと思っているので、そういうところから話を聞くようにしています。

野辺 年間20棟のうちメインエリアの比率は?

辻 メインとサブで80%でした。メインは50%ぐらいですね。

小平、小金井、国分寺で見ると、小平はOB客の建替え層が多いんですけど、小金井、国分寺は土地なし客が多い。東京は土地が少しずつ上がっているため、以前は地縁のない人は練馬で買いたがっていたようですが、今は練馬でも買えなくなって、中央線の吉祥寺、三鷹でも買えず武蔵境にきて、その人たちが小金井、国分寺まで来ているのが現状です。小金井、国分寺が結構土地なしサラリーマンのいい狙い目の場所になってきてます。

柳井 コンセプトハウスがない時のメインエリアでの集客の時に、どういった広告の出し方をされていたんですか。

辻 ほぼホームページでの集客なんですね。最近やっているのはバスの後ろに看板を掛けたり、駅のポスターに諫早通信を入れるぐらいで、ネット広告はやってないです。facebookを始めたんですが、アクセス数が減りつつあるのでどうしようかと対策を考えているところです。

酒井 6月までHOME’Sもやってたんですよ。でも過去3年間遡ってみたらHOME’Sからの集客の契約は0件。HOME’Sをやっていれば月10~12ぐらいの資料請求があったんですけど、手間ばかりかかって契約には至らない。HOME’Sをやめた7月以降はだいたい2、3件の資料請求なんですが、ほとんど会えるので、効率的には良くなっているとは思います。

柳井 雑誌広告もあまりやられてないんですか。それも逆に凄いですね。

うちは売上げが8億円ぐらいですけど年間3,000万円ぐらい広告費をかけてますから。いくらホームページがあっても結局見つけてもらえなければしょうがないので、それがSEO対策にお金をかけるとかリスティングをやってるとかではなく、何もやらなくてもそれだけ集客があるというのはホームページが良くできているのかなと。

辻 ホームページのアクセスがちょっと落ちてきているので、来年の2月までには全面変えるべく打ち合わせをしています。

柳井 例えば、「小平市、注文住宅」といった時に「諫早建設」が何番に出てきますか。

辻 ほぼ一番に出てきます。結構お客さんは見るんですよね。

酒井 今、効率は結構いいので集客できればもっと棟数が増えると思ってますが、そこのノウハウがない。

柳井 プランを出さずに、ほぼほぼ決めてくれる人を設計に渡せる営業力が凄いなと思うんですね。謙遜されていますが、実は凄いノウハウが詰まってるんじゃないかと思うんです。

菰田 お客様への取り組みと営業トークは気になったんですけど。

酒井 『諫早通信』を読んでいただけるとだいたいわかっていただけるかと思うんですけど、お客様を知ろうとするというところを一生懸命やっています。お客様に興味がなければいけないし、お客様を好きにならなくちゃいけないと思ってます。

『諫早通信』は1部30~40円、少なくて1,000部印刷して、発行がOBのお客様と仕掛けているお客様で780くらいです。あとは駅に置いたり、新規のお客様に資料請求で配ったり。

インタビューに行くと、お客さんが我々も思ってもいなかったような良いことを言ってくださるのでびっくりすることがあります。

それと、メール版の諫早通信に現場や進捗状況の様子(今日の見せ場など)を1回8カットぐらいの写真を付けて建設途中のお客様に報告をしているんですね。それは職人が仕事をしている写真なので顔もわかって、お客様も現場に行って「大工の○○さん」と呼んでくれるので、心の報酬といっているんですけど、それが良い結果をもたらしてくれるわけです。

野辺 プロセスを重視しているというふうにお客が見てくれるということが、とても大事ですね。

定期的なOBリフォームはやられているんですか。

酒井 それがまだ定期的にできてないので。怖いのは、OB訪問というように打ち上げて、誰も来なかったら悪いじゃないですか。そこが二の足を踏むところなんです。

野辺 それは他人に見せようとするからそう思うわけで、純粋に調子はどうかとOB宅を訪問する。そうでないと拾えないじゃないですか。一番情報を持っているのは諫早のファンであるその人たちだから。

辻 『諫早通信』も相当読み込んでいてくれているので、ファンになってくれるのはやはり嬉しいですね。

野辺 時間になりました。今日はありがとうございました。

(文責:SAREX事務局)