映画産業華やかなりし頃、松竹、東宝、日活などの大手映画会社に混じって俳優、演出家などが独立プロダクションを設立し、数多くの名作を発表した時代があった。戦後では黒澤明の黒澤プロダクション、石原裕次郎の石原プロモーションなどが有名である。
彼等は大手映画製作会社に縛られることなく、自ら企画し納得した作品のみを創ってきた。それは商業としての利潤追求を主としたものではなく、映画文化の担い手として良い作品を世に出したいという想いが全てであったに違いない。
映画産業と住宅産業とはつくるものもつくり方も大きな違いがあり、同一視することはできないが、映画であれ住宅であれ、少なくとも「良いものをつくり、社会の共感を得たい」という想いは違わないと思う。
映画製作も、脚本家、演出家(監督)、俳優、美術など多くのスタッフをまとめて治めて、いかにベストな映画を制作していくかがプロデューサーの仕事である。
住宅づくりも設計職、大工職を始め、各職方、施工管理職、資材供給者、経理職などのスタッフをまとめて、それぞれの職分を全うさせるべく「治め」ていくのが、プロデューサーとしての工務店のなすべき仕事である。
このことについては大手住宅メーカーと工務店とに差異はない。あるのはそれぞれスタッフの技量の差だけであり、企業規模の大小に関係ない。
他社に負けない、自社ならではの家づくりを確立しようと思うならば、まず、スタッフの技量向上と人格形成を図り育成して治めていくことが肝要である。
ハウスメーカー及び住宅販売不動産業者は、設計職以外の、スタッフとしての技能職を治めることができないゆえに、ブランドは有っても住宅の企画設計、部材の製造以外は、工務店に依存するしかないのが現状である。
時代は変わっても、家づくりの中核は、職人というスタッフをまとめて治めている工務店であることに間違いはない。家づくりのプロダクションとして小なりといえども、大手住宅メーカーに伍して、堂々と優れた家づくりができるのが工務店である。
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