バブル経済の崩壊という事態
があったにせよ、経営のピンチを招いたということは誰のせいでもなく、経営者である自分自身の責任であったが、曲がりなりにも工務店経営を今まで真面目にやってきたのに、どうしてこんなことになったのか、と本気で考えるようになった。
そして、創業時にある人から諭されたことに思い当たった。
会社設立の数年前に、大工をやめて他の職業につきたいとある人に相談したことがあった。その時、その人から職業の意義について言い聞かされたことを思い出した。
それは「君の仕事である家づくりは、君に与えられた天職であり、人に喜びを与えることができる素晴らしい仕事である。君ならきっと成功する、誇りを持ってがんばれ」と言って、色紙に次のような短歌を書いてくれた。
起き伏しの 尊き家の 建つ見れば 君の仕事は いよよ尊し
当時は天職の意義などと教えられても、頭では理解できるが、心では分からない、というのが偽りのない気持ちだった。
そして「事業経営が精神論でできるわけがない」などと高を括っていたが、試行錯誤の経営を長年続けてみて、やっと工務店経営の本筋に目覚めたと思う。
経営の大きな苦難に直面し、改めてこの時の天職の意義について考えた時、全ては自分自身に原因があったのだいうことも悟れた。
それまでは強気で押してきた私も、「潰れるかもしれない」という経営のピンチに立たされて、やっと気付きと反省の気持ちが起きてきた。
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