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桁、登り梁固定ボルト |
番匠型住宅梗概・
〔2-2〕屋根スタイルの変遷と登り梁工法
住宅の外観スタイルは、屋根の構造によって決まる。戦前から、昭和30年ごろまでの住宅は町場大工と称される棟梁がその設計を負っていたが、その形は概ね「切妻」「方形」「入母屋」の3種類であった。
その建物のグレードによって上から入母屋、方形、切妻の順に決まっていて、葺き材もほとんどが和瓦であって、金属屋根は現在のような贅沢なものはなく、“トタン屋根”と称する亜鉛鍍金鋼板の平板葺きか、“なまこ”と称する波型鋼板葺きがあったが、これらはほとんどローコストの貸家普請(賃貸住宅)に使われ、注文住宅には使わなかった。
その後、神社仏閣建築の銅板瓦棒葺きなどが緩勾配屋根に用いられるようになったが、いずれにしても立面スタイルによって屋根の形、勾配を決め、それによって葺き上げ材を選択する、というルールがあった。
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片持ち母屋鼻 |
現在はデザイナーの好みでも施主の好みでもなく、敷地の面積が屋根の形を決める大きな要素となってしまった。首都圏ではパワービルダーによる建売と、地場工務店による建て替え需要がほとんどであるが、建売は勿論のこと、建て替え住宅の敷地も狭小地がほとんどで、隣地から50・も離せれば良い方である。和風のプロポーションは軒の出で決まるが、ほとんど「雨樋をつけるのが精一杯」というところである。
狭小地に、いかに容積を大きく確保できるかが注文者の最大の慾求であるが、それには地下室をつくるか、小屋部分の空間をうまく合法的に(完成検査の受け方などのテクニックも含めて)活かせるかしかなく、このことが工務店設計者の腕の見せ所である。
建築基準法の制限に北側道路の斜線制限があるが、この制限内の空間を無駄なく利用しようとすると、自ずから屋根は急勾配になる。ここにできる三角空間を利用するには、小屋束などはできるだけ少ない方がよい。ゆえに、母屋、束を省く登り梁方式が有利であり、登り梁頂点を合掌として固定緊結すれば、棟繋ぎだけで済み、棟木、棟束がいらなくなるので、小屋裏利用には有利である。
番匠型住宅の小屋構造は以上の理由から、登り梁方式を基本とした。登り梁と桁の緊結には、番匠型金物のパイプ引き寄せボルトを登り梁上端から桁に通し、桁とパイプボルトはドリフトピンで固定する。
この引き寄せボルトの使用により、切妻屋根ケラバの破風板取り付け用の母屋鼻材が簡単に取り付けられる。
〔2-3〕断熱野地パネル
間隔1.8m、0.9mに取り付けられた登り梁間に、断熱材を充鎮した番匠型野地パネルをN50ネイルで固定する。厚さ25・、巾105・のフレーム材に、厚さ12・の構造用合板を野地板としてスクリュービスにて固定する。野地板と接着している鋼板屋根の場合には、耐熱性のある不燃野地板の珪酸カルシウム板とか、大建のダイライトを使用するのがベストである。
断熱材については、グラスウール、スチレンフォームなど自由だが、旭化成の「ネオマフォーム」が耐燃焼性能と断熱性能が優れているので、かなり高くつくができるだけ小屋についてはネオマフォームを使用するようにしている。
この番匠型野地パネルはネオマフォームを使って充填断熱工法における在来軸組住宅の、“次世代省エネルギー基準”を満たす・地域における屋根部位厚さ92・以上はともかくとして“新省エネルギー基準”の・地域における屋根部位40・の2倍、80・は確保している。パネル下端には450ピッチで胴縁が取り付けられていて、内部造作時に12・のプラスターボードを下張りし、ピーリングなどの仕上げ材を打ち上げる。
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(上)断熱野地パネル
、(下中央)小屋裏パネル下端 |
〔2-4〕耐力壁パネル
番匠型住宅工法での耐力壁は、筋かいでもパネルでも使用することができる。どちらを選ぶかはプラン(平面図)によって決めるが、双方の併用も良しとする。
パネルフレームの枠材寸法は75×36とし、構造用合板9.0・、12.0・をスクリュービスにて室内側に固定する。断熱材は野地パネルと同じ旭化成のネオマフォーム40・、或いはスチレンフォームなどを柱にパネルを固定後に充填する。
〔2-5〕根太レス剛床工法
小屋梁、2階梁ともに梁間隔を910・、或いは1000・として、それに直交するように長手方向に本実加工した厚合板を張る。
1階床組は、従来の大引きをなくし、全て土台として土台上端にあわせて、910・、或いは1000・間隔で鋼製束などを用い上棟時に設置する。その上に2階床と同じく厚合板を張る。
釘はCN75を使用し、間隔は合板の外周で150・、中通りで200・とする。本実加工部分に接着剤を塗布して貼り継ぐが、火打ち梁などを省くことができる。
〔2-6〕番匠型住宅構造躯体
この構造表し工法は「番匠型住宅」という弊社のオリジナルシステムであるが、住宅における構造表し建築は今始まったものではなく、昔から民家建築として伝承されたものである。番匠型は、それらの中から残せるものは伝承し、改めるべきところとしてコネクター部分の加工における大工手間の省力化と、併せて母屋、束、垂木、大引、根太などを省き構造の大幅な簡略化を図った。
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