新築住宅建築において、木材の供給は大きく変わり街中から木材店が消えていってから久しい。プレカットが普及したからだけではなく、造作材は大部分が新建材に変わり、商社が扱うようになったのに加え、本来材木店に卸しをする問屋、産地製材、また木材市場までが工務店にダイレクトに供給するようになった。また材木、新建材だけでなく、住設機器、照明器具に至るまでメーカーの直売セールスが当たり前になってきた。その価格に至っては、扱い量、工務店の与信などによって千差万別で、掛け率と称するゴマカシが大手を振っている。
最も、このような材料を仕入れ、請け負っている工務店の見積もりもいい加減というか、悪く言うとゴマカシに近いものだろう。
住宅のコストは、大きく分けて「材料」と「工賃」と「経費」と「利益」であるが、材料と工賃の単価を正確に見積もることはおそらくない。経費も含めて材と工にそれぞれ利潤を上乗せしている、というのが偽らざるところであろう。だから見積もり合わせとか、入札とかの話になってくる。
工務店とハウスメーカーの違いは、工務店は匠業であり、ハウスメーカーは商業である。工務店のつくる家は注文生産であり、ハウスメーカーの供給する家は企画商品である。商品ならば生産過程のコストの開示は必要もなく、ユーザーから求められることもない。
工務店のつくる注文住宅に関しては、現行の見積書に見られる不透明なコスト開示は、時代遅れだと最近になって強く感じるようになってきた。
木材も大工手間も原価をありのままに表示する。そして経費も施工経費、一般経費(利潤も含む)ときちんと計上した見積もりを開示することが、駆け引きのない、透明な見積書ではないだろうか。
当然、値引きは経費の中からでき得る額に絞られ、依頼者も受注者も納得して契約ができる。現行のような元請による材料屋いじめ、下請けいじめのコストカット(値切り)手法を採らなくても、建てる方も造る方も納得した家づくりができると思うのだが。
見積書の比較においても、ユーザーは材料をどちらが安く仕入れられるかということと、どちらが施工経費に充分な予算を見ているかをポイントに選択するようになるだろう。
材料を一式価格で表示する。そしてそれに利益を上乗せし、諸経費を10%ぐらいに計上し、あたかも廉価にみせるというゴマカシ見積は工務店の世界からなくさなければいけない、と痛感する。これから増えるであろう施主との契約トラブルに備える為にも、1本1,700円の集成柱を2,000円と表示したり、使用本数を水増しした見積書を添付した契約書などで受注していたらトラブルの種を蒔いているようなものである。
そこで、資材流通業者に望みたいことは、施主に対しても業者に対しても資材単価をオープン化し、ワンプライス表示の定価販売をする店舗を開設してもらいたい、ということだ。
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